物理学者/雪学者である小林貞作氏(1925~1987年)「雪華図説新考」によると雪の結晶が六方対称である記述は、紀元前150年ごろ中国燕の韓嬰による「韓詩外伝」にはじまるとされます。「凡草木花多五出 雪花独六出」――草木の花の多くは五弁であるが、雪の花だけは六弁である――。そして、ドイツの天文学者ケプラー(1571~1630年)が「新年の贈物―六角の雪について」の出版が見られる、とあります。
右図:「雪華図説」より
雪華図説には、右のような雪のスケッチが196も示されています。
小林氏は、利位が「雪の結晶が、なぜ六角か」を解説しているところを特筆しています。それによると、「空気中の水蒸気は上昇して冷えると雲粒を生ずるが、空気中にあるのでひとつひとつがみな円形をして浮かぶ。はじめは微細な円滴だが、やがて合併を重ねて大きな丸い雨粒となって落下する。」「冬期、雲をなす丸い水滴は寒気が厳しいと、ひとつひとつ円点となって凍結するが、今度は雨の場合と異なり、一粒一粒が個体であるから、併合しても全体としてひとつの大きな円を作ることはできない。そこで円点は互いに相寄り、六つの円で中心にあるひとつの円を囲むようにくっつきあい、こうしてひらひらと空気中を舞い落ちるうちに、あのような天地の奇観を作り上げるのである。」と解説しています。