色留袖は、その多くが友禅染めによって制作されます。京都で行われる京友禅は、質・量とも友禅染めを代表しますが、その京都から技術が伝承された新潟県十日町市の十日町友禅、石川県金沢市近郊で生産される加賀友禅、東京都の東京友禅などがあります。
京友禅は、友禅染めの発祥の地である京都で生産される染色技法。その特徴は、きらびやかで華やか、優雅で美しいことから「絢爛豪華な京友禅」と言われています。染め上がった色留袖には、金彩や刺繍を施すものもあります。型友禅で制作される紅型や、色の深さが特徴的なローケツ染め、絞りでは鹿の子絞りから辻ヶ花まで、各種の技法が合成されながら作られます。それほど京友禅の技術は幅広く高度で優れています。そこには、平安時代より現代までの1200年もの間、洗練され、発展してきた日本の美意識の源流が見られます。
加賀友禅の魅力は、貴族的な品格、そして何と言っても繊細な色彩と上品な趣にあります。写実的な描写は実は空想の世界のもので、たとえば梅の木に桜の花が咲き、しだれ桜に椿の花が咲く、と言うような抽象表現によって描かれています。
伝統的な加賀友禅は、臙脂、紫、黄、緑、藍という加賀五色によって描かれ、筆使いも外側から内側へと筆を運ぶ「内刷毛使い」で描かれます。もっとも代表的で不思議な特徴の一つに、「虫食い」表現があります。今を盛りに咲き誇る絶頂期の花の描写の中に、なぜか虫に食われた葉っぱがポツリ……人の世のはかなさ、哀調をおびた風情には仏教思想と深いかかわりが伺えます。また、図案の作成から色ざしまで一人で描きあげる加賀友禅には、その独自の伝統によって、作者の意図がより鮮明に表現されているのです。加賀友禅は、きものの中でも特に高級品で、振袖、留袖、色留袖など100万円以上の商品も珍しくありません。