初心者用の小紋、名古屋帯、長襦袢、帯〆帯上の5点セット
染匠が、ポリエステルやテトロンの着物など、いわゆる化学繊維の着物をほとんど取り扱わないのには、理由があります。
こう書きますと「敷居の高い呉服屋だ」「おカネ持ち相手の店なのね」とバッシングされるのですが、実は、これまで多くの社員やお客様からの要望にお応えし、何度も化繊の着物を販売した経緯があります。でも、今だに「化学繊維の市場は育たない」というジレンマから抜け出すことができません。
もちろん、「どれだけ努力をしたのか」には疑問の余地はありますが、多くの販売員は新人のうちは真剣に勧めているのです。しかし、勤務年数とともに正絹の着物を着るようになり、それに伴いお客様にも正絹の着物を勧めるようになります。この傾向は、当社に限った話では無いハズです。つまり、化学繊維の着物は「遅かれ早かれ、そのうち誰もが卒業してしまう」と考えているからです。
確かに、お手入れの簡便さ、手頃な価格を考えれば、化学繊維に理があがります。ところが、一度でも正絹の着物、特に小紋や紬を着ると、その思いは一変します。それは、ちょうど美味しい食べ物に出会ったときと同じです。今まで当たり前と思っていた評価は変わり、誰もが後戻りできなくなる感覚と良く似ています。要するに、着物は理屈ではなく「着心地」なのです。
きもの通なら当たり前のように「正絹の着物は軽くて暖かく、しかも、夏場は涼しい」と言われます。その評価は正直な気持ちで間違いありません。逆に、化繊の着物は、夏暑くて冬寒い。歩けば静電気が出て足にまとわり付き、帯はズルズルすべって締めにくいものです。しかし、そんな状況においても、昨今、化繊の着物を扱わなくてはならない事情があります。それは、海外から「e-learning」などで着付を学ぶ邦人や外国人の生徒が急増している現実があるからです。ほとんど着物を着たことがない日本人二世や三世、あるいは外国人女性に、いきなり10万円もする着物を勧めることは到底理解が得られないと考えているからです。
そこで、着物(9,500円~)と長襦袢(4,500円)は化繊でも、帯(15,000円~)や帯〆帯揚(13,000円~)は正絹にして、締め易く着やすいセットを準備したというわけです。入門者用、初心者用ではあっても、あとから無駄にならないよう十分配慮をし準備したつもりです。きもの専門店ならではのコーディネートに自信を持ってお楽しみいただけると思います。