一説によると、文化十四年(1817)江戸の亀戸(かめいど)神社に太鼓橋(たいこばし)が完成したとき、深川(ふかがわ)の芸者がその橋にちなみ、形を似(に)せて帯を結んだのが「お太鼓結(たいこむす)び」のはじまりと言われています。それまでは帯は結んで締めていましたが、お太鼓では帯締を使って帯を固定しました。帯締には、帯を締める役割とともにきもの美の総仕上げをする重要な役目があります。着物の色や柄の色、八掛の色合わせから帯へのコ-ディネ-ト。さらに、長襦袢の色目から伊達衿の色まで。そして最後に求められるのが帯締帯揚の色合わせです。着物から帯へ、繊細に選ばれてきた色調や格調に、最後に総仕上げをする帯締こそ、まさに画竜点睛(がりょうてんせい)の重要ポイントなのです。(資料:きものカルチャー研究所)
帯揚は、帯締と同様にお太鼓結(たいこむす)びから使用されるようになりました。きものと帯を上手(じょうず)に調和させるために、花嫁衣装や振袖の帯揚は目立つように華やかに飾りますが、それ以外は控(ひか)えめに見せる方が美しいと思われます。帯の脇(わき)から見えるわずかな色目(いろめ)に奥ゆかしさとセンスを感じさせられるものです。
礼装用(れいそうよう)の帯締帯揚セットは、訪問着、付け下げ、色無地、江戸小紋などに合わせることができます。コーディネートの基本は、まずは、着物の一色、あるいは、帯の一色から同系色(どうけいしょく)で調和をはかります。そして、同系色の次は類似色(るいじしょく)で試みます。最後に、対比色(たいひしょく)の調和もありますが、これは上級者のコーディネートです。
※帯締帯揚の字は、業界では帯〆帯上の略字を常用しています。
金銀糸の帯〆は、着物と帯に優雅さと豪華さを加えます。極細の絹糸と上質の金銀糸で組まれた帯〆は、金銀糸の粘り強さに、一度締めたらゆるまない独特の締め心地が味わえます。
帯〆は、高価な三分金を使い、やや広めで五分幅(約1.9cm)ありますので、振袖にも、総絞りの帯揚げでは演出できない上品な装いが可能です。高級な加賀友禅や辻ヶ花染の着物にも、すっきりと優雅な着こなしができるでしょう。
一流の伝統工芸品だけが持つ、本物を味わっていただけたらと思います。