裏勝り
裏勝りとは、表地よりも裏地に高価な生地を使ったり、派手な絵柄を付けたりすること。たとえば、男物の羽織のように表は無地でも裏地には大胆な手描きの羽裏を付けたり、麻や木綿の裏地に絹を付けたり、人目に付かない見えないところで秘かに贅やお洒落を楽しむことです。
江戸時代に出された奢侈(ぜいたく)禁止令により、当時のきものの色は、鼠色、茶色、藍色。無地が主流ですが、柄は、せいぜい縞か格子が関の山。しかし、地味で渋くて控えめで限定された色柄の中に、四十八茶百鼠のような多くの微妙な色目、縞や格子の種類の多さ、そして、鮫・毛万・霰など、後の江戸小紋の原型となる文様が多様に生み出されました。なかでも歌舞伎の「助六」は、黒の格を一気に引き上げ、黒地の羽織は男のなくてはならないお洒落な必需品となったようです。
裏勝りとは、そんな御上からのお達しに従いながらも、どこかで反骨精神「心意気」を示し、それが、ある意味「粋」とも受け止められたのでしょう。(資料:きものカルチャー研究所「続・着こなし講座」)