美学における考え方や思想環境の変化を知ることで、きものの「美しさ」を表現する方法や、楽しみ方が大きく変わるでしょう。「美学」という言葉は、aesthetic(エステティック)から発生したもので、本来は「感性学」と同じことを意味しています。今日、大学や企業との交流や融合が急速に進み、すでに学術と産業は表裏一体の関係です。当きものカルチャー研究所で実践中のイメージ・シミュレータ(ImageSimulator)は、そんな「感性工学」のひとつの試みです。
魅力とは、理論や技術を超え、人を引きつける不思議な力です。それは、今まで言葉にならないもの、感じるよりほかにないものとして扱(あつか)われてきました。その魅力を感性工学によって「見える化」した技術がイメージ・シミュレータです。
左図は、当ホームページ上で小紋に袋帯を選択した時のコーディネートです。可愛らしい兎(うさぎ)に十五夜お月様を連想させる華丸(はなまる)文様をメルヘンチックに合わせてみました。「美しさ」を斬新(ざんしん)性、豪華、上品、格調、古典的、渋味、粋(いき)、洒落(しゃれ)の8つの感性ワード(因子(いんし))に分解し、それぞれの感性強度がグラフ化されています。この組み合わせは、古典的で豪華で、しかも洒落っ気のある装いと言えるでしょう。
右図は、黒地に唐草(からくさ)文様の結城紬(ゆうきつむぎ)に幾何学(きかがく)文様の博多帯を合わせています。感性領域は左側に偏(かたよ)り、渋くて古典的、粋な雰囲気(ふんいき)となりました。このシステムによって自分の好きなきもののイメージが感性ワードとして現れます。どう表現して良いかわからないときにも、明確な言葉で認識できるでしょう。また、感性ワードを理解することで膨大な商品量の中から類似の商品を検索し、簡単に選び出すことが可能となります。もちろん、お客様の嗜好(しこう)の把握(はあく)、売れ筋商品の傾向を分析し、データに裏付けられた新しい商品開発にも役立ちます。